奈良林氏の主張を発生熱量や温度から検証する
アメリシウム241を5gをミューオンで無害化した?場合の発生する熱量
まず、前提として、(1) 対象はアメリシウム241 (Am-241) と仮定します(指定が無ければ通常は Am-241 を想定します)。
(2) Am-241 の代表的なα崩壊エネルギーを典型値 5.486 MeV/崩壊 とします。
(3) 「アメリシウム5 g を無害化するために発生するエネルギー」を、その 5 g に含まれる全原子が1回ずつ崩壊(=エネルギーを全て放出)した場合に放出される総エネルギーと定義して計算します(現実には崩壊には長い時間がかかると考えられますが、エネルギー総量として評価する)。
発生するエネルギー総量の計算
1. モル質量を 241 g/mol として、5.00 g のモル数:n = 5.00/241 = 0.020747 mol
2. アボガドロ数 N= 6.02214076 x 10^23 mol^-1より、原子数:
N = n x N ≒ 0.020747 x 6.02214076 x 10^23 ≒ 1.2494\times 10^22 個
3. 1崩壊あたりのエネルギー 5.486 MeV をJ単位に変換:
1 eV = 1.602176634 x 10^-19 Jより、
5.486 MeV = 5.486 x 10^6 eV x 1.602176634 x10^-19 J/eV
≒ 8.793 x 10^-13 J(1崩壊あたり)
4. 全崩壊時の総エネルギー(J):
E(total)= N x 8.793 x 10^-13 J ≒ 1.0982 x10^10 J
5. 電力量 (kWh) に換算:
1 kWh = 3.6 x 10^6 J より、
E(total) ≒ 1.0982 x10^10 / (3.6 x10^6) ≒ 3050 kWh
結論
アメリシウム(Am-241)5 g がすべて崩壊した場合に放出する理論上の総エネルギーは約 1.10×10^10 J(≒ 3.05×10^3 kWh)相当です。これは、一般家庭の電力消費に換算すると、数か月分〜1年分に相当するオーダーです(世帯ごとの消費に依存しますが)。
補足
- 実際の Am-241 の半減期は約 432 年 なので、自発的に短時間で全部が崩壊することは現実的ではありません(エネルギーは長期間にわたってゆっくり放出されます)。
- 「無害化のために発生するエネルギー」と質問された場合、上は 放出される総エネルギー の見積です
- また、別の同位体(例:Am-243)を想定する場合はモル質量・崩壊エネルギーが若干変わるため、数値も変わります。
前項を前提にして、24時間で平均的に放熱したとして、
温度がどのくらいになるか?
前項より、Am-241、5 g が全て崩壊して放出する総エネルギーは約 1.098×10¹⁰ J(≈ 3.05×10³ kWh)と見積もることができます。これを 24時間(86,400 s)で排熱すると、放出が一定なら 平均出力は約 1.27×10⁵ W(約127 kW) になります。同じエネルギーを短時間に局所に吸収させた場合の温度上昇は、加熱される物質の質量と比熱に強く依存します。以下に代表的なケースでの温度上昇 ΔT を示します(前提と計算を明示します)。前項より、
- 総放出エネルギー E = 1.0982 x 10^10 J(Am-241 5 g がすべて1回崩壊した場合の理論値)
- 24時間 = 86400 sで放出(均一に放出されると仮定)
P = E / 86400 = 1.0982 x10^10 / 86400 ≒ 1.2715 x10^5 W(≒ 127.2 kW)
温度上昇の計算
温度上昇 ΔT は
ΔT =E / (m c)
で与えられます(ここで m は加熱される物質の質量、c は比熱 [J/(kg·K)])。
以下に代表例を示します。
ケース別:全エネルギーを一様に吸収した場合の ΔT
1) 水 1 kg:比熱 c=4184 J/(kg・K)
分母 m c = 1・4184 = 4184 J/K
ΔT = 1.0982 x 10^10 / 4184 ≒ 2.625 x10^6 K
→ 極端に高温;物質は気化・プラズマ化します😱
2) 水 1000 kg(= 1 m³ の水)
分母 =1000・4184=4.184x10^6 J/K
ΔT = 1.0982 x 10^10 / 4.184 x 10^6 ≒ 2.625 x 10^3 K
→ 1000 kgの水でも沸騰・分解域を大きく越える😱
3) コンクリート 1 m³:質量 ≈ 2400 kg、比熱 c ≒ 880 J/(kg・K)
分母 =2400・880=2.112 x 10^6 J/K
ΔT = 1.0982 x 10^10 / 2.112 x 10^6 ≒ 5.20 x 10^3 K
→ 材料は溶融や蒸発する領域😱
では、今度は金属1,000kgで考えます。
仮定
- 総エネルギー: E=1.0982x10^10 J
- 質量: m=1000 kg (金属1 m³分)
- 初期温度: T0 = 293 K(約20°C)
| アルミニウム(Al) | 鉄(Fe) | |
|---|---|---|
| 比熱(J/(kg・K)) | 900 | 450 |
| 融点(K) | 933 | 450 |
| 沸点(K) | 2792 | 3134 |
| 融解潜熱 (J/kg) | 397 x 10^3 | 247 x 10^3 |
| 蒸発潜熱 (J/kg) | 10.9 x 10^6 | 6.3 x 10^6 |
4) アルミニウム(1000 kg)
1. 加熱:293 K → 933 K(融点)に要するエネルギーE1 = m c (Tm - T0) = 1000 x 900 x 640 = 5.760 x 10^8 J
2. 融解(全質量)エネルギー
E2 = m L = 1000 x 397000 = 3.970 x 10^8 J
3. 液体を933 K → 2792 K(沸点)まで加熱
E3 = 1000 x 900 x1859 = 1.6731 x 10^ 9 J
4. 蒸発(全質量)に要するエネルギー
E4 = m L = 1000 x 10.9 x 10^6 = 1.09 x 10^10 J
合計して全質量を気化するのに要るエネルギー:
E(total)= E1+E2+E3+E4 ≒ 1.35461 x 10^10 J
エネルギーは 1.0982 x 10^10 Jなので、全気化には不足している。
沸騰到達(E1+E2+E3 = 2.6461×10^9 J)後に残るエネルギーは
E = 1.0982 x 10^10 - 2.6461 x 10^9 ≒ 8.336 x 10^9 J
となる。
蒸発に要する全エネルギー E4 = 1.09 x 10^10のうち、 8.336 x 10^9 が供給されるので、
蒸発する質量比は約 8.336/10.9 ≒ 0.764。
→ 約 76 %(≒ 764 kg)が蒸発(気化)し、残り ≒ 236 kg が沸騰(液)状態に残る。
気体温度は沸点付近(余剰エネルギーは蒸発に使われているため追加の温度上昇はなし)。
😱😱😱
5) 鉄(1000 kg)
1. 加熱:293 K → 1811 K(融点)に要するエネルギーE1 = 1000 x450 x 1518 = 6.831 x 10^8 J
2. 融解(全質量)エネルギー
E2 = 1000 x247000 = 2.470 x 10^8 J
3. 液体を1811 K → 3134 K(沸点)まで加熱
E3 = 1000 x 450 x 1323 = 5.9535 x 10^8 J
4. 蒸発(全質量)に要するエネルギー
E4 = 1000 x 6.3 x 10^6 = 6.3 x 10^9 J
合計(全気化に要るエネルギー):
E(total) = E1+E2+E3+E4 ≒ 7.82545 x 10^9 J
エネルギー 1.0982 x 10^10はこれを上回るので、鉄は全量気化しますね。
そして気化に使った後の余剰エネルギーは、気体(蒸気)温度上昇に貢献します。
余剰エネルギー:
E = 1.0982 x 10^10 - 7.82545 x 10^9 ≒ 3.15655 x 10^9 J
仮に蒸気の比熱を C(gas) ≒ 1000 J/(kg・K)}とすると、蒸気の温度上昇は
ΔT(gas) = E / (m c) = 3.15655 x 10^9/(1000 x 1000) ≒ 3156.6 K
従って最終温度はおよそ
T ≒ T + 3157 ≒ 3134 + 3157 ≒ 6291 K
→ 鉄は完全に蒸発し、それがさらに約 6.3×10³ K 程度まで加熱されるという結果になります
(非常に高温の気体/プラズマ域)。
😱😱😱😱
結論
これは、仮に負ミューオンが必要量存在したと仮定し(これがそもそもおかしいのですが)、アメリシウム241、5gをそのミューオンで本当に核変換を起こし、無害化したときの発生熱量・温度を概算で求めたものです。どんな耐熱性素材で作ったのか不明ですが、少なくともドラム缶(?)はボカン💥と破壊的になるのはほぼ間違いありません。
*また、本記事は批判的検証目的であり、実務的な安全評価や詳細な物理シミュレーションとしては扱えず、概算値として参考評価として考えてください。